
医療と教育をミキシングしたような場所を求め、北海道芸術高等学校グループ(以下、「芸高」と言う)に辿り着いたM先生。2020年から東北芸術高等専修学校/仙台サテライトキャンパス(通称:東芸)で、講師として生徒たちに美容保健を教えている。
もともとは、医療的な処置を受けながら学校で教育を学ぶ子どもたちが通う、支援学校の現場で看護師として働いていた。
たくさんの学びがある素晴らしい職場だったが、身体の問題で体調を崩し、寝たきりになり離職したそうだ。病床に伏している間に、支援学校にいた社会に出られない子供たちの気持ちが痛いほど分かったと言う。
「ベッドの上で人生を振り返った時に、自分の人生を考え直した。」
健康でいることの大切さを身をもって体験し、これからの人生は自分にも他人にも「自分を大切にすること」を伝えたいと思った。そのような医療と教育をミキシングしたような場所はないかとアンテナを広げたところ、芸高を見つけたそうだ。
講師として通いはじめた1年目、まだ全快でないM先生にとって、東芸の柔軟な仕組み・雰囲気がとても助けになったと言う。
はじめは1週間に1度、教えに行けば良かったし、何より生徒たちのキャラクターが素晴らしかった。間違うことがあっても、「先生違うよ!」と笑顔で教えてくれた。反応が良く明るい生徒たちだったからこそ、失敗することも怖くないと思い、少しずつ自信がついていったそうだ。
M先生が教えているのは、人体解剖学と生理学、皮膚科学といった美容的分野。
国家試験対応科目でもある。
中学校を卒業したピュアな状態の子どもたちが生徒なので、高校生としてエンジョイしてほしい気持ちもあるが、国家試験通過のためにしっかりと指導しなければならない。
この年齢の生徒たちには難しい内容もあるので、いかに分かりやすく、どう工夫して伝えるかを常に意識しているそう。
人体の知識が「自分の身体を管理できる財産」となってほしい。
人間はどうやって呼吸、排便するかなど、人体の仕組みを学ぶ学科はなかなかない。知識があれば、身体の患部に意識を向けることで、どういう動きか感じ取ることも、あるいは、コントロールすることだってできると言う。
自分の教える人体の知識が、国家試験に合格するためだけでなく、生徒たちにとって「自分の身体を管理できる財産」として残るように、大切に教えているそうだ。
いつか生徒たち自身の身体を守れるように。
体調を崩した経験のあるM先生ならではの願いが込められている。

M先生が講師になろうとした際、向いていないと夫や子どもに笑われたと言う。自分でも人に教えることに自信があるわけではなかった。でも病床に伏している間に、どうしてもトライしてみたくなったのだ。
そして実際に教鞭をとってみて、これまでにないやりがいを感じた。1年目の生徒の卒業式では、もう感動して感動してたまらなかったと言う。
生徒たちが国家試験に合格し、社会に羽ばたいていくことに達成感を感じ、先生自身の糧にもなり、また次の年へと繋がっていった。
それを繰り返して今や5年目。たくさんの生徒たちを社会に送り出している。
アロマテラピーとガーデニングが趣味のM先生。大好きな香りのバラの手入れをしたり、キャベツやネギなどの農作業を楽しむことがリフレッシュの時間だ。
とても丁寧に手入れしているのが、写真からも伝わってくる。
「生命を大切にすること」「身体を動かして健康を維持すること」自然とそんなメッセージを受け取ってしまった。
それからM先生の声、うっとり聞き入ってしまうような美しい声質なんです。
これなら講義の難しい内容も抵抗なく頭に入ってきそうだ、そんな風に感じながら取材をさせてもらった筆者でした。
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